素晴らしき日々

 僕は酒を飲むのが好きだ。酔っ払ったときのふわふわした感じや、その場でしかできないような刹那的な会話、大きくなる自分の気持など、そういったものが好きだ。正確に言うと、僕は酒による副産物が好きだ。

 

 もちろん可愛い女の子と(可愛くなくても)飲む酒だったり、気の許せる友人と飲む酒は言うまでもないが、一人で飲む酒も同じくらい良い。一人で酒を飲みながら煙草を燻らせ思索に耽る。そういった時間は何物にも代えがたい。

 

 僕が店で一人で酒を飲むときは、ほとんど必ずバーボンウイスキーを頼む。別にバーボンウイスキーでなければだめなわけではないのだが、気がつくとバーボンを頼んでしまう。

 注文の順番も大体決まっている。1杯目はフォアローゼズのプラチナ。2杯目にブッカーズを頼む。3杯目はその時の気分で変える。ハーパー12年を飲むときもあればウッドフォードリザーブのときもある。どれも家においていない(おけない)酒ということだ。

 そうして3杯のウイスキーと10本ほどの煙草を楽しんでから店をでると、僕の気分は最高に落ち着いて高揚する。夜の澄んだ空気は心地よく、車のヘッドライトは暖かい。そういうとき、僕は思う。この瞬間のために酒を飲むのだ、と。

 

そうして家に帰って煙草臭いコートを脱ぎながら感じるのだ。素晴らしき日々とはこういうことを言うのだと。